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自動車材で広がる「ケミカルリサイクル」、化学メーカーに商機

 

日経XTECH 先端技術ワード 2024.01.15

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02705/011100001/

 

 

 

 二酸化炭素は、地球上どこにでも存在する上に、物資の輸送や工場での生産活動を行なえば必ず生成します。ですから排出量を規制しても全く排出しないということは困難と言わざるを得ません。現在、二酸化炭素は、大気中に約0.04%(400ppm)含まれています。その量は膨大で(二酸化炭素(330億トン:2019年)は、プラスチック生産量(4億トン)よりもはるかに多く、もし二酸化炭素を資源として用いることができれば石油使用量の低減となると考えます。

 しかし,これを実現するためには,二酸化炭素は反応性が低いため,有効な触媒の探索や反応条件の最適化が必要です。

 一般に高分子の処理を考えると、強酸(硫酸、塩酸、金属系の酸など)や強塩基(水酸化ナトリウムやなど)の触媒が必要です。高分子の分解に上記の強酸、強塩基を触媒として用いた場合、触媒を不活化するための中和などの操作が必要です。言い換えるならば、廃プラを処理して化学原料を得る代わりに、中和塩という廃棄物を新たに生み出す。という、「廃棄物(廃高分子)処理のために廃棄物(中和塩)が生まれる。 矛盾が生じます。

 我々が研究中の手法は、炭酸を用います。炭酸は、二酸化炭素と水からできます。

 このような自然にどこにでもある無毒な物質を用いて、高分子材料であるポリウレタンポリウレアを加水分解可能であることを見出しました。二酸化炭素と水ですから、中和は不要です。(当然、中和塩が生成しません。)

 

 

 さらに本手法は、副生成物を伴わないため、精製の必要がないほど生成物の純度は高い高分子の原料が得られました。私たちは、極めて理想的な化学分解と認識しており、ケミカルリサイクルとして非常に優れた手法です。

 

 このほかにも本手法を用いれば、様々な酸で起こしうる反応(アセタール化反応や、多糖の加水分解、糖とアルコールからのグルコシド化など)を行うことが可能です。セルロースのような多糖および糖類を化学原料へと変換する手法は論文として発表しています。

関連する外部発表論文

本九町 卓
接着の技術誌 135(2) 13 - 19 2019年10月
Suguru MOTOKUCHO
Journal of The Adhesion Society of Japan 54(9) 343 - 348 2018年
Suguru Motokucho, Yu Nakayama, Hiroshi Morikawa, Hisayuki Nakatani
Journal of Applied Polymer Science 135(8) 2018年2月20日
Suguru Motokucho, Akito Yamaguchi, Yu Nakayama, Hiroshi Morikawa, Hisayuki Nakatani
Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry 55(12) 2004 - 2010 2017年6月15日
Suguru Motokucho, Takeshi Matsumoto, Yu Nakayama, Ryohei Horiuchi, Hiroshi Morikawa, Hisayuki Nakatani
Polymer Bulletin 74(3) 615 - 623 2017年3月1日
Suguru Motokucho, Hiroshi Morikawa, Hisayuki Nakatani, Bart A.J. Noordover
Tetrahedron Letters 57(42) 4742 - 4745 2016年

著書

シーエムシー出版, 和田浩志(担当:共著, 範囲:第13章 ポリウレタンのケミカルリサイクル)
シーエムシー出版  2023年6月31日
技術情報協会, 島村, 道代(担当:共著, 範囲:第8章第3節 ポリウレタン、ポリウレアの炭酸水を用いた環境低負荷型ケミカルリサイクル法の開拓)
技術情報協会  2020年3月31日
本九町 卓(担当:共著, 範囲:第18章 ポリウレタンならびにポリウレアの炭酸を用いたケミカルリサイクル)
シーエムシー出版  2019年11月
本九町 卓(担当:共著, 範囲:炭酸を用いたポリウレタンならびにポリウレアのケミカルリサイクル)
シーエムシー出版社  2019年7月

特許

受賞

  1. ポリウレタンのリサイクル法の開拓
    本九町卓
    研究進歩賞, プラスチック リサイクル化学 研究会
    2021年07月07日
  2. 「ポリウレタンの高圧二酸化炭素下における加水分解」研究奨励賞
    橋本康希
    第30回研究発表会 マテリアルライフ学会
    2019年07月04-05日
  3. 「亜臨界または超臨界二酸化炭素中でのポリウレアのメタノールを用いた分解反応」第62回優秀論文賞
    本九町 卓
    一般社団法人日本ゴム協会
    2015年5月

本九町 長崎大学 ポリウレタン ポリウレア ケミカルリサイクル 炭酸 ポリウレタンフォーム ポリオール イソシアネート